5 公金の使いみち 第二部 会派行政視察の是非

(1) はじめに   (2) 経緯   (3)会派行政視察の問題点   (4) 会派行政視察の果実 ①政策提案との関連性(その1 議会発言 その2 視察報告) ② その他の果実  (5)結び

(1) はじめに

あらためて定義しましょう。「会派」とは、政見を同じくする議員二人以上の団体であって議長に届けられたものをいいます。「会派行政視察」とは、その会派の全員または一部が、議会から派遣されて他市に視察に赴くものであって、所要経費を一般旅費から支弁されるものをいいます。 高槻市役所のホームページを見ると、行政視察は委員会によるもの、会派によるものと政務活動費によるものの3種に分けてあります。多くの議員が会派行政視察を行っている一方で、このカテゴリーの視察だけはまったく行わない議員もいます。 ここでは、会派行政視察の意義はどこにあるのか、必要なものか否かについて、「公金の使いみち」のデータに加えて、関連する材料を呈示します。

(2) 経緯

会派行政視察については、高槻市には忘れてはならない歴史があります。これを語る二人の人物の会話に耳をそばだててみましょう。

(3)会派行政視察の問題点

まず、会派が市の予算を使って視察に出かけるのは本来的におかしい、ということを構成要素ごとに示します。

   会派が出かける会派を税金で支援している実態

会派による視察を市の予算で行っている現状は、会派の活動を税金でもって支援していることになります。会派がまとまって視察に行く、それは会派の活動そのものです。視察結果はマニフェスト作成など会派の知見となるのでしょう。ならば会派の活動費を使うべきで、税金で会派を支援する必要はありません。個人の見識を高めるための視察ならば個人の金を使うべきです。議題に関する会派としての見解をまとめるための視察ならば理解できますが、この点は④で触れます。

   予算を使って政務活動費との二重払い

地方自治法が2013年に改正され、政務調査費は政務活動費と名を換えました。このとき使途も広がって旅費にも使えるようになりました。この結果、議員は視察に際し会派行政視察旅費(款項目;議会費、節;旅費)と政務活動費の両方を旅費として使えるようになり、二重払いとなりました。 同じ使途について複数の予算科目からお金を引き出す、これは予算運用上の邪道です。これでは費目ごとに予算額を定める意味がありません。法改正と同時に会派行政視察旅費は姿を消すのが論理上の必然というものでしたが、今なお残されています。

   視察に出かける法的根拠がない

形の上では、議員の視察は地方自治法第100条第13項(*1)にいう議員の派遣であって、これに必要な旅費を支給されるものです。じっさい、高槻においても、視察計画が市議会で議決され、その計画どおり議員が派遣され、それに要する旅費は「議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」により「高槻市の職員の旅費に関する条例」に準じて支給されます。このあたりに何の違法性もないように見えます。 しかし実態は、同法にいう「必要があると認め」られて視察に赴くのではなく、議員1人当たり年間20万円を上限とする議決(*2)に基づく定例的な出張であってみれば、これは制度化された給付にほかならないと市民には映るのです。 地方自治法第204条の2に「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これをその議会の議員(中略)に支給することができない。」という規定があります。しかし会派視察費についてはこの条文の精神が活かされてなくて、条例などないままに年間20万円を上限とする旅費の支給を受けています。議員の派遣に伴う旅費の支出であるから本条にいう給付ではない、したがって条例は不要、というのが役所の論理でしょうが、市民から見ると会派視察旅費に違法性はなくても不法な支出です。

*1地方自治法第100条第13項 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができる

*2 議会の議員の行政視察に関する要綱(平成5年2月1日)第5条

次に、市のホームページや情報公開請求によって開示された資料から浮き彫りになった問題点を列挙します。

   視察の必要性

議題の審査のため、それに関連する事項の調査を行う視察なら理解できます。しかし視察目的を見ますと、議題との関連性が見えず高槻市の行政上必要とも思われない事項の調査も見られます。行先についても、なぜそんな遠くに行く必要があったのか、時期について、なぜその時期でないとダメだったのか、理解不能なところが多々あります。

   視察の緊急性

議員の派遣は、高槻市議会会議規則第166条によれば「(前略)議会の議決によりこれを決定する。ただし、緊急を要する場合又は閉会中の派遣にあっては、議長において決定することができる。」と定めています。調査の結果、2011年度から2013年度まで34件の他市町への派遣があり、このうち13件が議決を経たもの、21件が「議長における決定」でした。議決が原則であるにもかかわらず、議長決定を行った視察のどこに緊急性があったのか、なぜ次の議会での議決を待たず閉会中に決定しなければならなかったのか、これも理解不能です。

  手続きその1

派遣手続きの不透明さが、会派行政視察の姿を市民の目から隠しています。 議決による手続きについては、たとえば平成25年第3回臨時会の5月17日、日程第10として議員派遣について議題に挙げられていますが、 議長「本件については、別紙お手元に配付しておりますとおり、議員を派遣しようとするものです」 と、言われても傍聴人には別紙の配布はありません。捜してみると傍聴席の後に積まれている書類の中にありました。わずか数行ですから読み上げても時間はかからないのに、毎回上記のとおりの同じセリフです。その別紙ですが、誰が、いつ、どこへ行こうとしているのかが書いてあります。しかし、派遣目的は「都市行政の実態調査」とだけ書かれ、具体的な内容はありません。派遣先市長への依頼文書を見ると具体的テーマは事前に決まっているようですが、市民が議員の派遣内容を知るのは、議員が視察を終え、市のホームページに「会派行政視察の報告」が掲載された後になります。 一方、議長決定による視察は、決裁文書に事務局と副議長・議長が順次ハンコを押すというボトムアップの内部手続きによるものです。その過程は市民には見えません。 税金を使った議員活動でありながら、市民が事前に明確に知る機会のないまま、決められ、実行されていることが問題です。ついでに言えば、用務を明確にしない出張など一般の会社にはあり得ないのに、それが市議会ではまかり通っています。

  手続きその2

 議決が軽視されています。 上記⑥に挙げた例について、時間を追って眺めてみましょう。 平成25年4月25日 起案 様式第1号 件名 別紙○○議員外3名の行政視察について□議決により実施する。 □次のとおり決定する。(サークル高槻視議会注:□議決にチェックあり) 4月26日 決裁 (サークル高槻視議会注:事務局5名、副議長及び議長の押印) 4月  日 視察先市長及び市議会議長あて視察依頼文書発簡(サークル高槻視議会注:文書に日付なし) 5月2日 旅費前払い 5月17日 議決 5月22~23日 視察 5月24日 旅費精算 上記のとおり、旅費が議決前に支払われています。このことから事務的な決裁が最重要視されていることが窺えます。なんのための議決でしょうか。議会が軽視されています。 また、議長決定という手続きが、定例会開催月である6月、9月、12月になされているケースがあるのも理解できないことです。そのほとんどが定例会末期あるいは終了翌日に起案されていますが、なぜ、本来の議決が行われないのでしょうか?このような手続きは、2011年度はゼロでしたが、2012年度に1件、2013年度に6件ありました。その行先は、東京、大分、熊本、埼玉、沖縄、北海道の各都道県でした。

4) 会派行政視察の果実

政策提案との関連性

. 議会発言

他市町への会派行政視察がどのように政策提案などに活かされているか、それを検証するために、議会の会議録をチェックしました。 調査は、とりあえず2012年度の会派行政視察につき、視察目的またはそれに類する語句をキーワードとして視察以後のすべての本会議及び委員会の議事録を検索し、視察がどのように言及されているかを確認するという方法をとりました。したがって、まだ市議会のHPにアップされていない会議録は今回の調査に含まれません。 調査結果は次表のとおりです。

調査結果は、27件の視察のうち、 A政策提案など何らかの果実が認めらるもの…5件、 B議会の発言から視察におもむいたことが了解できるもの…3件 、 C関連議題についての発言はあるが当該視察との関連が不明なもの…4件、 D視察以後の議会において言及のないもの…15件 という状況でした。会派視察の約80%(上記B、C、D)が明確には果実が認められない出張でした。 果実を生んだと認められる5件(上記A)には二つのタイプがあり、ひとつは視察した某市のあるシステムは有意義であるので本市でも採用を検討されたい、というもの、もうひとつは視察内容を消化して政策立案の基礎としていたものでした。その状況は次のとおりです。

a  公明党議員団による2013年2月4~5日の東京都城北中央公園視察は、「先日、東京都の城北中央公園に防災公園として視察をさせていただいた折、土のうにかわるものとしてウオーターゲートを見せていただきました。雨水災害時の防災グッズとして、ご検討をお願いいたします。」という吉田忠則議員の発言を導いています。

b 公明党議員団の同日程における町田市視察は、他市の視察体験と相まって、藤田議員によるスポーツ推進計画提案の基礎となっています。

c 公明党議員団による2013年2月12~13日の足利市視察は、宮田議員の公共施設の屋根貸し事業による太陽光発電設置事業に関する政策提案の裏付けとなっています。

d 公明党議員団の同日程における小山市視察は、議会発言という形での成果はありませんが、議会あり方検討会における議会基本条例審議の参考情報とみなすことができます。

e 無所属和田議員の2012年10月10~11日横須賀市視察は、中核市における児童相談所の設立の将来構想に関する発言への影響がうかがえます。

. 視察報告

「議会の議員の行政視察に関する要綱」第4条によれば、視察を終えたときは7日以内に「行政視察出張報告書」を議長あて提出することになっています。この報告書の中に視察の果実がはっきりとした形で表われているか否か調べてみました。 この報告書がどのようなものか紹介しますと、a 視察者の連名で1部を提出 b 作成は1名が担当 c 体裁は1都市1テーマごとに、長いもので5~6ページ、短いもので1ページ以内の自書による状況報告に視察先で配布された資料を添付…というものです。 自書による文面は、視察先の行政システム・機器など視察目的としたものの概要、メリットとデメリット、運用上の問題点、今後の見通しなどを述べ、最後に所見を付ける、というのが標準的です。中には所見のないものもありまして、この場合果実があったのか否か窺い知ることはできませんでした。また添付された資料は、「高槻市議会視察資料」と銘打った表紙がついていますが、内容的にはインターネットにより視察先市町のホームページで閲覧できるものが多くありました。 報告書に付された所見のいくつかをここに列挙します。なお、転写の際の誤記を避けるため、長くなりますが、写真でお示ししましょう。それぞれに、会派名、視察議員名、視察日程、視察先と視察テーマを頭書きします。

a 民主元気ネット、岡井・川口・中浜・野々上・橋本・平田、2012年5月28~29日、長野県松本市 クラインガルテン事業について

b 公明党議員団、 笹内・灰垣・宮田・吉田章、2013年2月12~13日、栃木県小山市 議会基本条例について

 

 

c 公明党議員団、奥田・笹内・灰垣・藤田、2013年8月21~22日、香川県三豊市 トンネルコンポスト事業について

d 自由民主党高槻市議会議員団、岡田・角・田村・三本及び市民連合議員団、久保隆夫・久保隆・段野・山口、2013年8月26~27日、沖縄市 こどものまち推進プランについて(注:2会派合同の視察。うち1会派の報告)

e 大阪維新の会高槻 太田・蔵立、2013年11月14~15日、愛媛県松山市 ごみ減量に関する取り組みについて

ここに挙げたもの以外に多くの報告書に目を通しましたが、視察結果に基づき何かの政策立案の方向性をにおわせるものはあっても、具体的な政策案を呈示するところまで話を展開する報告書はありませんでした。ほとんどの報告書が「本市の参考にしたい」またはこれに類する言葉で締めくくられていました(「本市の参考にはならない」という所見もありました)。 なお、ここに挙げた感想や所見の部分だけでは報告書の全体像が見えませんので、本項の末尾に二三の報告書の全文(添付資料を除く)を添付します。これは視察の状況を理解するためと、この際、議員による視察の成果を市民であるわれわれも共有したいためです。

その他の果実

a 報告書を読むと、少なくとも報告書起案者は視察対象を玩味のうえ議員本人の内的世界に取り込み知見を広めたことが窺えます。

b 本会議議事録の中に1件だけ、2012年11月の高槻維新の会(当時の名称)の視察にかかる図書館の民間委託に言及した公明党灰垣議員の発言があり、視察結果が会派を越えて共有されている様子が認められました。

c 公明党宮田議員の太陽光発電のための屋根貸事業に関する政策提案は、視察前の議会発言から視察報告書まで一貫性があり、視察が政策立案に密接に関連していることが認められました。

(5)結び

会派行政視察にどのような意義があるのかを知るために、議会発言の中に、あるいは報告書の中に見えているであろう果実を捜してみました。 結果は、議会発言において27分の5の直接的関連性または応用成果があり、報告書では視察の成果から政策を導くものはなく、煎じ詰めれば「本市の参考にしたい」という結論に収斂されているものがほとんどでした。また調査の過程で、様々な問題点があることが明らかになりました。 以上のデータを提供して、会派行政視察に意義ありとするか否か、市民の皆さんの判断にお任せすることに致します。 繰り返しになりますが、わがサークルは、何らかの結論に向けて読者を誘導する意図はありません。市民の皆さんの判断材料を提供するために、行政視察に関連のある事象と問題点を列挙しようというのが本項の本旨です。

添付資料 無所属 和田、2012年11月21~22日、長崎県諫早市・福岡県大牟田市、諫早市地域づくり協働事業について、大牟田市災害時等要援護者支援制度について

自民党・高槻市民の会議員団、岩・福井・吉田稔、2013年10月8~9日、神奈川県平塚市、自殺対策について

公明党議員団、岡・藤田・宮田・吉田章・吉田忠、2013年8月8~9日、東京都板橋区、自転車安全走行の条例づくりについて